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『ギルは誰かを好きになっちゃいけない立場なの…?』
少し驚いたように目を丸くする彼女を見て、苦笑した。
「正確に言えば過去形ですね。
…純粋、純潔でなければならなかった私は神を愛してしまった。
それを知ってから私は汚れ、堕ちたのです」
『…ギルは、上の世界の人なんじゃないの…?』
「大天使と言われていました。しかしあの方に盲目になってしまい…
私は…」
小さくなる声。微かに震える腕。
そうか…まだ、忘れられないんだね。
『…ギル、私は汚いとか思わないよ。
私が前居た世界とは違うんだね、両端の世界は。
一人に執着して何が悪いの?
そっちでは認められないみたいだけど
…私は、綺麗なものだと思うよ』
蜜の言葉にギルは目を見開き、ゆっくり目を閉じた。
「…そう言われたのは初めてです…
向こうでは、蔑みの対象でしたから…」
『だからね、その気持ちはそのまま大切にしてて良いと思う…
消し去ることなんかないよ…』
蜜の言葉はゆっくりと胸に染み込んでいった。
初めて、認められた気がした。
再び腕に力を入れるギルの背中を蜜は優しく叩く。
窓の外では、空が夕焼けに染まり始めていた。
暖かい色が二人の足元を照らす。
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