落ち葉の季 ~おちばのとき~

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礼を言って受け取ったヤキイモは、暖かかった。 半分に割られたヤキイモからは、ふわっと柔らかい湯気が揚がる。 甘い香が鼻孔をくすぐる。 ヤキイモ半分の、彼女の何気ない優しさが無性に嬉しかった。 彼女は半分になってしまったヤキイモを大事そうに両手で持ち、ふーっと息を吹きかけている。 一口食べて、幸せそうな笑顔を浮かべた。 無邪気な笑顔だった。
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