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戻ってきた朋也が見たのは、汐と、一人の少女だった。
しかし、その少女が誰なのか分かったとき、「少女」という考えを改めなければならなかった。
「汐ちゃんっ、風子にもお手伝いさせて頂けませんか?」
「うんっ」
そこに居たのは、伊吹風子その人だったからだ。
「お前……なんでここに…?」
「岡崎さん、お久しぶりです。こんにちは」
「あ…あぁ、久しぶりだな」
昔、風子は長く病院に入院していたことがあった。
今では迷惑なくらい元気なやつだが、退院の際には姉の公子とその旦那、朋也の職場の先輩である芳野と共に挨拶に来た。
その後も、たまに一人でひょっこりと遊び来る。よほど汐が気に入ったらしい。
「お前も海水浴に来てたのか、公子さんたちは一緒じゃないのか?」
辺りに公子や芳野の姿は見えない、はぐれたのだろうか。
「お姉ちゃんたちは迷子になってしまったようなんです。風子とても困りました」
「まいごー」
恐らく、と言うか、間違い無く風子自身が迷子なのだろう。
「――ちゃーん!」
「…ん?」
「風ちゃーん!!……あ!」
風子の姉、伊吹公子改め芳野公子と思わしき人影がこちらに向かって走ってくる。
やはり風子が迷子だったということだ。
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