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しばらくして、芳野を連れて公子が戻ってきた。
「おう、岡崎。すまないな」
「いえ、これといって何もしてないですよ」
暑さと焦りによるものだと思われる汗をまとった芳野は、平静を装いつつも、これまた風子が、妹が心配だったに違いない。
――かつて、妹を心から案じた兄が居たように、ここにも兄妹愛があった――。
「…さん、岡崎さん!」
「…っん?あぁ、何だ?まだ海水(みず)いるのか?」
あれから風子は汐と離れたがらず、仕方なく保護者四人は砂の城の建造に加わった。
おかげで当初に比べて立派すぎるものがそこにあり、既に仕上げの段階に入っていた。
「いえ、呆けていたので。今でも十分バカな顔なのに、これ以上バカになられては汐ちゃんに悪影響ですから」
「お前にだけは言われたくないっ!」
本当に失礼なやつだった。
「それより、お城の出来がいまいちなんです。主にヒトデ成分が足りてません!」
「ヒトデ成分?…なんでヒトデなんだ?」
「クリスマスツリーのてっぺんにヒトデがいるのと同じ理由です」
「あれは星だっ!」
…ヒトデ?
「どうでもいいです。とりあえずヒトデをその辺から取ってきてください」
「海水浴用の浜辺にヒトデはいないだろ…岩場も遠い、諦めるんだな」
何かが引っかかった。
ヒトデ、何かとても大切なことを忘れているような。
そんな気分だった。
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