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「…汐にはまだ難しいかもしれないが、とりあえず聞いてくれるだけで良いんだ。汐の名前なんだけどな、『汐』の字の意味は、海の波のことなんだ」
「うん?」
朋也は汐の手を握って語りかける、案の定、あまり理解できていないようだった。
「ママの『渚』という字は、この砂浜と同じ意味、なんですよ」
「ああ、そうだ。汐はな、どんなに遠いとこへ行ったとしても、きっとママのところへ戻ってくるって、そんな気持ちが込められているんだ…」
いつか存在した世界には、還るべき少女がいた。
その少女は街の幸せによって還ることができた。
それは幸福が生んだ奇跡。
人々と街の調和。
“『彼女』は幸せでしたか?”
――いいえ、今も、幸せですよ――
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