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古河家からアパートに帰宅しても話題は続いていた。
「海か…全然連れて行ってあげられなかったな、プールなら行ったけど…」
「お仕事忙しかったですし、仕方ないです。プールも楽しかったですよ?」
一度だけ、汐が生まれてから一度だけ、海に行った。それ以降も無理をすれば行けたはずだ。しかしあの頃は仕事が絶えない時期が続き、近場のプールに行くのがやっとだったのだ。
「汐は、海覚えてるか?」
「うん」
当時はまだ、汐は今よりずっと小さくて、歩くのがやっとだったというのに。
驚いた…あの幼さで海に連れてった甲斐があったな…
今では元気に走り回る姿が微笑ましい。こんな時は、汐の成長を感じられずにはいられない。
「しおちゃんスゴいです!私なんて行った場所の名前が思い出せないくらいなのに…」
「……酷いな……」
渚は悩みに悩んで、そしてやっと答えに辿り着いた。しかし、朋也の心の傷が、癒しという聖地に辿り着くことはなさそうだ。
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