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――当日。
真夏の太陽の寵愛を受け、恥ずかしさのあまりに高温を発する砂浜と、それをなだめるかの様に穏やかに打ち寄せる涼しげな波。
蒼々と広がるそれは、なんとも言いがたい開放感と、大いなる存在感を持っている――。
朋也たち家族は秋生の宣言通り、海に来ていた。
天候にも波にも恵まれ、海水浴日和とはこのことだ。
「うみー!」
「すごいキレイですっ、蒼いですっ」
汐と渚が興奮するのも頷ける、それほど海は澄んでキレイだったのだ。
「海のキレイさに比例して海水浴客もすごいな…場所あるのか?」
朋也はもっともな意見を言ってみる。
なんてったって砂浜にはパラソルやらシートが一面にはびこっているのだ、自分たちの場所を確保出来るか心配にもなるだろう。
「んなもん、そこら辺にいるバカップルでも追い出せばいいだろ」
オッサンは鬼畜だった!
「駄目ですよ秋生さん、ちゃんと探しましょう」
早苗は相変わらずの笑顔で秋生を止めていた。
「…それにしてもオッサン、その荷物は何なんだ…?」
「パンだ」
秋生はアロハシャツにグラサンという、海に行けば何人かは見かけるであろう姿で、全く海に似合わない単語を発していた。
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