所詮、無力

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所詮、無力

僕は何て馬鹿だったのだろう。只の暇潰しがこの結果。 もう葉に近づくのは辞めようと考えていた。 産まれて初めて興味を持った存在。故に僕のせいで迷惑はかけたくない。 頭の中は葉で一杯だった。彼女の自由な生き方が羨ましく憧れていた。 でも僕には、憧れに近づく事も許されないらしい。 教室に入ると自習という文字が黒板にあり、皆最後の教科だからだろうか早々に帰ったらしく、教室はがらりとしていた。 「自習か…」 「ああ。都合が良かったな。麻倉はどうだ?」 「休むように言ったよ」 「…そうか」 蓮も彼女を心配しているらしい。それもその筈。あんな事があった後だ。 蓮と葉の事について話していると、間から恐山さんが話しかけてきた。 「ねえ、葉はどこ」 「……。」 「どこって聞いてるの」 「…保健室に連れて行った」 「何故?」 「怪我を…したから」 「何があったの…?」 「……。」 「…良いわ。大体予想はつくもの」 「そう…」 「だからあんたと関わらせるのは嫌だったの」 「…ああ。僕が守りたいけど、今じゃそれさえもありがた迷惑だ。 恐山さん、葉を頼むよ」 「言われなくとも分かってるわよ。 でもあんた男でしょ?責任、とりなさいよ」 「責任?」 「あんたが守れって言ってんの」 「今言ったじゃないか。僕が近づけば、また葉がやられる」 「…あんたしか出来ないのよ。あんなに楽しそうな葉、今まで付き合ってきて初めて見たわ。 好いているとまではいかないけれど、あんたを気に入っている事は確かよ」 「…でも」 「つべこべ煩いわね!このあたしが言ってるの、間違いじゃないわ。 今まで葉はあたし意外誰にも心を開かなかった。それがあんたはすんなり受け入れられた」 「僕が…?」 「ええ。それも容姿目当てではなく心が。だから今までと同じように接して頂戴。それがあんたの出来る事」 「恐山さん…」 「アンナで良いわ。言っておくけど、葉のために言ってるのよ。本当だったらあんたみたいな面倒くさい奴、反対なんだから」 「すまない…」 .
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