生きる事が傷

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「で、今回は何の用で帰って来たの?」 「何の用って…自分の家に帰って来るのは当たり前だろう」 「…そう」 突然の帰宅は必ず意味がある。何時も突然なんだけどさ。嫌な予感しかしない。 「仕様がない、率直に言う。中学を卒業したらこっちに留学しなさい」 は? 留学?僕が? 頭に疑問符がいくつも並ぶ。何のためにアメリカ何かに行かなきゃいけないんだ。 「…ハオ、混乱しているかもしれないけど、貴方のためにも良い事なのよ?」 「母さんの言う通りだぞ。何れ僕の息子である君には麻倉企業を継いでもらうんだから」 何時だってそうだった。 僕の人生なのに選択権はまるで無い。 中学だって皆と一緒に普通の公立に行きたかった。なのに入りたくもない私立に入れられて。 今となっては良い仲間に出会えたから感謝はしてるけど、何時だって僕が自ら何かを決める事は無かった。 「……断る」 「ハオ…」 「全く、聞き分けの悪い子に育ったね」 「何とでも言えば良い。後を継ぐ気なんてこれっぽっちもないし、僕はこの生活に満足している」 「親のスネをかじっている分際で何を言うんだ。反抗期なのは分かるけど…」 「だから、何とでも言えば良いさ。僕はここを離れない。これは僕自身が決めた事だ。今まで何時も僕はあんた達の言いなりだった。もううんざりだ」 「…ハオ!!」 ─ぱしっ 「…っ!」 「どうしてこんな子に育っちゃったの?やっぱりラキストに任せたのがいけなかったんだわ…!!」 「茎子、落ち着いて。どうしても、行かないんだね」 「ああ。これは僕の意思だ」 「ふう…。仕様がない。行く気が無いなら無理矢理連れて行ってもらちがあかないからね」 「……。」 「でも、それはお前と麻倉の縁を切るという事になる。良いね?」 「…そりゃあ良いな。もう関係無くなるなんて、願ってもいない事だよ」 「随分と嫌われたもんだね、全く…」 ろくに食べもしないで部屋に戻った。 やっぱり、目的がなければ帰って来る筈が無い。 でも今までの僕とは違うんだ。縁を切るなんて脅されたって引き下がるような事はもうしない。こっちだって我慢の限界だ。 明日にはロスに帰るだろう。そんな事を考えていたら、何時の間にか眠っていた。 .
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