犠牲は心が

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僕はまた葉に嘘をついた。 帰らないで何時も一緒に星を見ていた丘に寄り道。 今日はこの間のように葉が後を追って来る事は無い。 アンナが家の用事で先に帰っていたから、その手伝いをすると話していた。 心の中でさよならを言う。 この位置から見える煙突の煙。 1つだけでっぱってる三階建ての家。 夕飯時をしらせる風の匂い。 目の前に見える沈み欠の夕日。 当たり前だった事、全てが胸に響く。 一人で来たのはこんな格好悪い僕を葉に見られたくなかったから。 来るのはこれが最後。自分の中でそう決めていた。 ─ ~♪ ラキストからの着信がきた。 帰らないと不味い時間か…。 「…もしもし」 「そろそろお帰りにならないと、支度が間に合いませんよ」 「…わかってる。ありがとう」 「いえ、ではお気をつけて」 いよいよか。 なんて、自分が決めた事だから後悔したってもう遅い。 柄にもなく日常の全てのものに名残惜しんでいた。 .
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