黒い空にある灯

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黒い空にある灯

「何処に連れてこられるかと思えば…」 そこは町全体を見渡せる丘のような場所。 女の子なんだからもっと可愛いお店とかに行って、何か物をねだられると思った。 少なくとも取り巻きの女の子達はそうだ。 「気持ち良いだろ?オイラ、帰りは何時もここに来るんよ」 「何時くらいまでいるの?」 「夕飯に間に合うくらいまで。家が近いからすぐ帰れる。ここは星が凄く綺麗だから落ち着くんだ」 「ふーん…」 「興味なさそうだなιまあ見たらわかるって!」 「わかったよ…」 「あ、でもお母さんとか心配しねえか?もしかしてお前んち、反対方向だったり…ι」 「大丈夫。この場所は知らなかったけど家はすぐ近くだよ。親もそんなに心配しない」 「そっか!なら星見てから帰ろうぜ!!」 「ああ、そうするよ」 何時の間にか彼女のペースに飲み込まれていた。 自由で何にも捉えられない真っ直ぐな瞳は、僕がずっと求めていた物に近い気がする。 「でも何故僕を連れてきてくれたんだい?」 「ん?いや、何かお前とは気が合いそうだったんよ」 「そう…」 「今日は心配してくれてありがと、な」 「本当だよ…居眠りはしてても授業には出てるのに古文だけいないなんて変だよ?」 「ああ。何か古文は気持ち悪いんよ」 「気持ち悪い?」 「読んだ事ねえ文とか言葉でも、勉強もしてねえのに意味がわかっちまってι何か変な感覚なんよ」 「…僕も、だ…」 「え?」 「僕も古文だけは何故かすらすら読めるんだ」 「す、すげえ!本当か?今までこんな話しした事無かったから…」 「麻倉さんが言った通り、僕達気が合うのかな(笑」 「だな!あ、葉で良いぞ!!同じ名字だから違和感あるだろ」 「そうだね…葉」 「おう」 僕等は色々な話しをしながら星を見た。 何故か彼女には全てを話せる気がする。 麻倉 葉。 彼女と一緒にいると、素の自分でいられる。こんなにも心が安らいだのは何年ぶりだろうか。 .
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