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綾を抱えたまま保健室の扉を開け、中に声を掛けた。
「先生、すみません。この子、看てください!」
「あら?永田君。そんなに血相変えて、どうしたの」
腕に抱かれている綾に気が付くと、
「おやぁ?もしかして高山さん?今度は何やったの。また鼻血?ここに座んなさい」
養護教諭ね磯野が呆れたようにパイプ椅子を出した。
綾は永田の腕の中でバツが悪そうに頭をかいている。
「もう大丈夫だから、降ろしてよ」
ようやく腕から解放され、大人しく椅子に座り、磯野が手渡した脱脂綿で血液を拭き取る。
ことの経緯を永田が説明すると、磯野はふぅと溜め息をつきながら話した。
「永田君、あなた一人が責任を感じることはないわ。この子にも責任あるんじやない。高山さん、貴女もしっかり前を見てなかったんじゃないの?
心配することないわよ。この子はここの常連なの。
この前は確か、木から落ちて、その前は階段の手摺を滑り降りて勢い余って壁に激突して、それから…。」
綾の隣に立ち、心配そうしている永田に、磯野は指折りしながら綾の失態を読み上げていった。
「先生、もうそれくらいにしてください」
綾は上を向いたまま、これ以上は堪らないと云わんばかりに大きく手を振り回し、唇を尖らせ剥れていた。
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