日本一の男

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 寝転がっているブットイから、視線をセニョールに戻す淳蔵。 『しょうがない奴だ。  おう! セニョール! 少し休め!』  サンドバッグを蹴りながら、 『いや!  (バシッ)  もう少しやるっす!  (バシッ)  俺には!  (バシッ)  練習しかないっす!』  飛び散る汗。  熱い若者だ。  気持ちだけは……。 『おう!  聞いたか? ブットイ  てめえも少しは  セニョールを見習ったらどうでい!』  そう言う淳蔵の肩を叩く手。  いつの間にか  ブットイが淳蔵の横に来ていた。 『へへっ。  練習して強くなれんだったらね。  おう! セニョール!  スパーリングだ!』  セニョールに近づくブットイ。  答える恐れ知らずの若者。 『え!  俺とっすか?  ブットイさん、ケガしますよ』  ニヤリとブットイ。 『お前がな』  バシィッ!  次の瞬間、ブットイの右ローキックがセニョールの左モモに炸裂!  膝から崩れるセニョール。 『うわぁ~!』  間髪入れず、セニョールの背後から絡みつく。  拷問コブラツイスト。  見つめる淳蔵。 (センスはたしかに良いものを持っている。  これで  練習さえすれば……)  そこへ入ってくるサングラスの男  高橋源吉。  突然の来訪者に  振り向く淳蔵の顔が、  蒼白になる。 『げ、源吉……』 『久しぶりだな。  淳蔵』  拷問コブラツイストで締め上げられるセニョールの弱々しい悲鳴。 『い、痛いっすよ~』 『どうだ!参ったか!  ん?』  源吉に  気づくブットイ。 『おっちゃん!  そいつは誰でぃ!?』 『高橋ジムのオーナーの高橋さんだ』 『君がヤツオ・ブットイか。噂は聞いている』image=187873759.jpg
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