1719人が本棚に入れています
本棚に追加
/884ページ
そそくさと支度を済ませ、階段を降りる。
「おはようレイス君。今日も爽やかな朝でございますね~」
完璧な棒読みで改めて挨拶を済ませると、玄関で騎士団流の礼をするレイスの姿を見つけた。
「相変わらず律儀なこって……」
レイスが礼をしている先には、盾と剣をモチーフにした騎士団の紋章がある。
ちなみにレイスが今しているのは特殊な礼で、遠征など長期の別れの際に用いるものだ。
「……では、行って参ります」
レイスは呟いた後に顔を上げ、今度はアーツの方を向いた。その表情はどことなく責めるようなものである。
「……実の息子である君の方こそ、礼をすべきではないのかい?」
「んなモンは関係ねぇだろ」
「いや、あるね」
断固として言い切ったレイス。こういう彼が面倒臭いということを、アーツはよく知っている。
「はぁ……本当の息子かどうかなんて今さら関係ねーよ」
「家族だろ?」と付けたし笑って見せる。
しかしレイスは顔を俯けてしまい、そのまま沈黙が流れた。
最初のコメントを投稿しよう!