第Ⅰ譚 ―二人の始まり―

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そそくさと支度を済ませ、階段を降りる。 「おはようレイス君。今日も爽やかな朝でございますね~」 完璧な棒読みで改めて挨拶を済ませると、玄関で騎士団流の礼をするレイスの姿を見つけた。   「相変わらず律儀なこって……」 レイスが礼をしている先には、盾と剣をモチーフにした騎士団の紋章がある。 ちなみにレイスが今しているのは特殊な礼で、遠征など長期の別れの際に用いるものだ。 「……では、行って参ります」 レイスは呟いた後に顔を上げ、今度はアーツの方を向いた。その表情はどことなく責めるようなものである。 「……実の息子である君の方こそ、礼をすべきではないのかい?」 「んなモンは関係ねぇだろ」 「いや、あるね」 断固として言い切ったレイス。こういう彼が面倒臭いということを、アーツはよく知っている。 「はぁ……本当の息子かどうかなんて今さら関係ねーよ」 「家族だろ?」と付けたし笑って見せる。   しかしレイスは顔を俯けてしまい、そのまま沈黙が流れた。
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