第Ⅰ譚 ―二人の始まり―

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――それから十秒程経ち、いい加減アーツも焦れてきた頃。 不意に、レイスの肩がピクッと動いた。 「ぷっ……」   「ぷ?」   「あっはははは! どうした? 不貞腐れてるとでも思ったのか?」 いつもの仕返しだよ、と拳を付き出すレイス。 思えば、アーツは事ある毎に色々な手段でレイスを困らせていた。 要するに、今のはレイスなりの意趣返しなのだろう。地味にリアルなのが笑えない。 「僕が今さらその程度で動揺すると思ったかい?」   そう言って、レイスは再び笑い始める。 するとしばらく苦笑いを浮かべていたアーツも、僅かに拳を震わせた。 「ったく。いつもいつも、お前の冗談はリアル過ぎて笑えねぇんだよ……!」 そう言ってアーツは左手に握っていた鞘を持ち上げ、その柄に右手を掛ける。 対して、レイスも挑戦的な笑みを浮かべて腰に差してある剣を握った。 「いいね、朝の運動にはもってこいだ!」   こうなってしまえばいつもと同じだ。 もはや学校のことなど忘れてしまった二人は、玄関から出て稽古という名の喧嘩を始めてしまう。
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