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――それから十秒程経ち、いい加減アーツも焦れてきた頃。
不意に、レイスの肩がピクッと動いた。
「ぷっ……」
「ぷ?」
「あっはははは!
どうした? 不貞腐れてるとでも思ったのか?」
いつもの仕返しだよ、と拳を付き出すレイス。
思えば、アーツは事ある毎に色々な手段でレイスを困らせていた。
要するに、今のはレイスなりの意趣返しなのだろう。地味にリアルなのが笑えない。
「僕が今さらその程度で動揺すると思ったかい?」
そう言って、レイスは再び笑い始める。
するとしばらく苦笑いを浮かべていたアーツも、僅かに拳を震わせた。
「ったく。いつもいつも、お前の冗談はリアル過ぎて笑えねぇんだよ……!」
そう言ってアーツは左手に握っていた鞘を持ち上げ、その柄に右手を掛ける。
対して、レイスも挑戦的な笑みを浮かべて腰に差してある剣を握った。
「いいね、朝の運動にはもってこいだ!」
こうなってしまえばいつもと同じだ。
もはや学校のことなど忘れてしまった二人は、玄関から出て稽古という名の喧嘩を始めてしまう。
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