第Ⅰ譚 ―二人の始まり―

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  かくして事前指導という名の顔合わせが始まった。 まず先程の女教師が整列した生徒達の前に立ち、胸元に拳を当てて礼をする。 生徒達がこれに習うと、女教師は満足気に頷いて話し始めた。 「おはよう諸君。私は《ネフィル=ランジェード》。これからの学校生活では、君達の教師という立場で関わらせてもらう」 ネフィルが一礼し、生徒達もまた一礼で返答。 「昨今、我らがバーティア帝国を脅かす不貞な輩が跡を絶たない。そこで、こうして君達のような若い者達を騎士として登用しようという話になった訳だが――」 ネフィルの話が続く。 列の最後尾に並んだアーツはというと、さも退屈そうに大きな欠伸をしていた。 「ったく、そんなに長話して疲れねぇのかねー……」 「こらアーツ。また注意されるぞ」 「へいへい……」 レイスの諫める言葉に手をひらひらとさせて応え、やる事もないので前列の生徒を見渡してみる事に。 「……ん?」 気のせいだろうか。 斜め前の赤髪の女生徒とやたら目が合うのだが……。 「ま、気のせいだわな。……しっかし、なんで寒気がすんだよ……」 ――――。 「というわけで、この学校では剣術は勿論、他にも基礎学力や学友との交遊による人間関係などを学んでもらう事となる。私からの話は以上だ」 そしてどこから広がったか、拍手が波紋のように広がった。
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