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「んーぁあ! やあっと着いたか……」
《はぁ……本当にね。本来なら2日で来れる道のりをなんで僕らは一週間もかかったのか……》
「いーじゃねえか。着いたんだから」
ここは“北の都”とも呼ばれる小国“ヴェスタバ”。
広い国土を持っているが、そのほとんどを“ヴェーザス公園”と呼ばれる森林が占めている。
それを目当てに観光客があとを絶たないため、小国ながら情勢は豊かであった。
その“ヴェスタバ”に、青年と一匹の猫が入国した。
青年はグレーのロングコートを身にまとい、中には黒のシャツに黒のズボン。
皮のエンジニアブーツを履き、腰には皮の太いベルトが巻かれていた。
“アースブレイブ”には珍しい黒髪に金眼、時代遅れの大剣を背負っている姿は“ヴェスタバ”内でも異質である。
その横に置かれている黒のバイクの座席部分に座っている毛並みの美しい黒猫は金と銀のオッドアイと、やはり物珍しい風貌。
「はぁー……ねみぃー……まずは宿か」
《そのあとは仕事! ちゃんと働かないとすぐにお金が底につくよ!》
青年──シャオリー・レイアスはふと愛猫、ノワールへと視線を合わせる。
余りにも唐突なシャオリーの行動に、ノワールは背に嫌な汗をかいたような寒気を感じた。
「……喋る猫は高く売れるってか?」
《にゃッ!? じょ、冗談にゃ! 僕ものんびりーな気分にゃ!》
「そーかそーか……」
シャオリーはそのまま含み笑いを浮かべてバイクを押しながら歩き始めた。
ノワールはバイクから飛び降り、シャオリーの足元にまとわりつくように猫なで声を上げながらついて行った。
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