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ドスンドスンと、鞄をベッドに投げ、大剣を背負ったまま体ごとダイブさせる。
そんな主人の様子に、ノワールは大きなため息をついた。
《ったく……着いてそうそう……》
「いーだろ? 丸一日休みなく“黒騎”に乗ってたんだ。手足はもー限界。完ッ璧痺れてんだよ」
寝転んだまま背負っていた大剣を下ろし、ベッドの横へと立てかける。
あのあと、二人は適当にその場にいた人に手頃な値段の宿屋を聞き、ここへ到着した。
ベッド二つに簡易なキッチン、食事のできる二人掛けのテーブルと椅子に棚が二つ。
風呂、トイレも完備で、どこか古ぼけた家具であったが、シャオリーとノワールには十分だった。
ノワールは座っていたイスから飛び降り、ベッドへ寝転がるシャオリーの顔の真ん前に座る。
「……んだよ?」
《べっつにぃー。お休み中のシャオを起こすのは忍びないから大人しくしてるだけー》
「あっそ……」
身体ごとノワールからそらすように向きを変え、目を閉じれば、また目の前から強い視線。
耐えるように強く瞼を閉じようとも、やはり視線は変わらない。
…………。
「わぁーった、わぁーった! 行きゃいいんだろ、行きゃ!」
《よっしゃ!》
ノワールの粘り勝ちで、シャオリーはベッドから起き上がる。
そして立ち上がり、横に立てかけていた大剣を背負い直し、そのまま外へと向かった。
ふと振り返り、未だベッドの上のノワールへ視線を向ける。
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