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「おーい、バカ猫。置いてくぞー」
《ちょ! 待つにゃ!》
ノワールもベッドから飛び降り、ドアの前に立つシャオリーの元へと向かった。
* * *
《で、なに悩んでんのさ?》
ノワールは、目の前でしゃがみ込み、先ほどここまで乗ってきた全体真っ黒のバイクを見つめ、うんうんと唸っているシャオリーへ、半ば呆れの混じった声で訊ねる。
ここは二人の泊まる宿屋の裏手であり、そこにシャオリーのバイクが置かれていた。
当の本人であるシャオリーは、顎に手を当て、じーっとバイクを見つめている。
《おい、シャオ! なに悩んでんのか聞いてんだけど!》
「何って……“黒騎”に乗るか乗らないか」
ピシッ……と効果音が聞こえそうな勢いで固まるノワール。
その様子を不思議そうにシャオリーが見つめる。
「ノワ……?」
《乗ーるーなーッ! さっき聞いたろ? 歩いて10分の距離だぞ? 己はバカか!》
背を丸め、毛を逆立てて、シャオリーへと怒鳴るが、シャオリーはまだ何か言いたげにノワールを見つめた。
《なにさ?》
「10分も歩くのダルい」
さも面倒くさそうに言うシャオリーに我慢の限界が来たのか、そのブーツへと爪を立てる。
《バカが! 10分だぞ? 乗ってどうする、乗って! さあ歩く! きびきび歩く!》
ノワールにせっつかれ、その表情に不満は見て取れるが、ため息を一つ、渋々ながら歩き始めた。
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