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「あ゛ー……なんかねえかなー……」
ふらふらと依頼書の貼られている壁へ向かい、ぼんやりと見つめる。
ふと、その中で一枚の、まだ真新しい依頼書が目に止まる。
その依頼は“護衛”。
ランクは下から三番目のC級。
期間は本日から三日間であり、報酬は五百万ルク。
C級にしてはかなりの高額であり、三日間で五百万も稼ぐことができるのだ。
シャオリーはその依頼書を剥がし、床から見上げているノワールの目の前へとかざした。
《わーお、魅力的。だけどここに“面接有り”って書いてあるよ》
タンタンと、前足で依頼書の一部分を差す。
ムッと眉を寄せるシャオリーに気づかず、ノワールは言葉を続ける。
《うーわあ、フィーナールド邸のお嬢様の護衛だよ? フィーナールドって、“ヴェスタバ”一のお金持ちじゃん! こりゃシャオじゃ落ちるね》
「ああ゛? どーいう意味だあ、バカ猫ぉ?」
シャオリーはしゃがんだ状態で、両耳を左右に強く引く。
《いた! いたいって!》
「訂正しろ」
シャオリーが手を離せば、ノワールは前足で両耳をさすっている。
《ああ……面接以前の問題か……》
「ノワァールゥ……?」
片方のヒゲを持ち、顔が変形するほど引けば、ノワールは言葉にできない叫びを上げた。
「あの……」
そんなとき、シャオリーの後ろから声をかけられた。
振り返れば、そこには小綺麗な格好をした40代後半の男性が、どこか申しわけなさそうに立っていた。
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