11人が本棚に入れています
本棚に追加
(いいよなぁ…)
来年、高校3年。大学受験を控えたボクは、とても恋愛なんて考えられなかった。
それに、おととし、父親を病気で亡くした。高校を出たら、働きに出ることを母親にも相談したが『アンタは、学校の先生になりたいんでしょ?母さん、がんばるから、大学に行きなさい』そう言ってくれた。
その言葉を聞いて、是が非でも、大学へ行くための費用は、自分で稼ごうと、友人のお父さんが経営しているラーメン屋さんに頼み込んで、アルバイトをさせてもらっている。
ふだん“おやっさん”と呼んで慕っている親父さんの『クリスマスぐらい、孝行してやれ』という厚意に甘えて、早めに上がらせてもらった。
ボクは、息を落ち着かせながら、ケーキ売り場へと向かった。
サンタクロースの格好をした女性店員が立っていた。
「いらっしゃいませ~」
「すみません…予約していた高木ですけど…」
「少々お待ちください…え…っと…あ、こちらですね…高木夏樹様」
「はい。それです」
「お会計のほうが…5775円になります」
なんかのテレビ番組でこのイチゴのケーキを紹介しているのを見て、母さんや妹が口を揃えて『いつか食べてみたいなぁ』と言っていた。大きさのわりには、少し高い感じもするが(喜ぶのなら…)とこっそりバイト代を貯めて、買うことにした。
「はい。5775円、ちょうどですね。ありがとうございました」
最初のコメントを投稿しよう!