シアワセな、ひととき。

8/9
前へ
/78ページ
次へ
「今日は、楽しかったね、母さん」 「…」 「母さん?」 「ん?あ…ごめん。なに?」 「だから、楽しかったねって」 「あ…そうね…楽しかったね」 「母さん…浮かない顔しているけど、なんかあった?」 「うん…あのね、夏樹…いや…やっぱり…なんでもない」 「なんだよ、その言い方…よけい気になるじゃんか」 「こんな時にいうことじゃないんだけど…なかなか夏樹とも話す機会がないから…あのね…光恵のことなんだけど」 「うん…」 「じつはね、先週の月曜日、光恵…学校、休んだの」 「体調が悪かった、とかじゃなくて?」 「光恵がね、学校に行く時間になっても“頭、ズキズキするから行かない”って…」 「本当に頭痛がしたんじゃないの?」 母親は、首を振った。 「ほら、もともとあの子、体、弱くて、学校も休みがちじゃない?だから、わかるのよ、母さん。あの日は、ツライっていうよりも悲しい顔してた…学校で、何かあったんじゃ…」 「気にしすぎだよ」 「…だと、いいんだけど…もし、このまま学校に行かなくなったら…」 「だから、気にしすぎ。…まぁ、オレもちょっと気には留めてみるよ。じゃあ、オレも寝るよ。おやすみ」 「ごめんね。こんなときに…おやすみ」
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加