マナミの危機

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山田アキラとマナミは手を繋ぎ、警察署から近い、『県立しっぽ公園』のイチョウ林にいた。夕方の公園。夕日はほぼ真横に街を射していた。辺りには二人以外見当たらない。 イチョウの葉は落ち、地面を薄黄色に染めている。 「ここに、綾子との思い出があるんだ。」 山田アキラは小さな声で言った。誰に語りかけるというわけでもない感じがした。目はうつろ。足はフラフラだった。 マナミはそんな男を心配そうな顔で見上げた。 「綾子…」 マナミの手を離し、フラフラと一番大きなイチョウの幹に寄りかかると、その根元の土を素手で、掘り起こし始めた。 「おにいちゃん…何をしているの??」 「あぁ…ここにね…綾子との思い出を埋めたんだ。」 「思い出?」 「そう…これをマナミちゃんに見てもらいたくって…マナミちゃんは優しい子だから…きっと分かってくれると思うんだ」
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