29人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんなところに隠していたのか」
アイン警部が駆け寄り、転がっていたリボルバー式の銃を取り上げてから、シュレディンガーに撃たれて、横たわる山田アキラの手にカチャリと手錠を掛けた。
「いてぇ…いてぇよ…いてぇ…ちくしょう…」
「さぁ立て!」
撃たれたと言っても、シュレディンガーの銃の弾は、人用のそれよりも随分と小さいために、頭か心臓でも打ち抜かないと致命傷にはなりずらい。実際、山田アキラの腕からは血は出ているものの、シャツに滲む程度だ。
「アキラくん。」
シュレディンガーが声を掛ける。
「…」
「君が川澄夫妻に選ばれた訳が分かったよ。」
「…」
「君のその、下劣な幼さだよ。このような小さなレディにまで憎しみの的にした、そういう君の身勝手さが…あの夫婦を燃え上がらせたのだ。下劣な人間と交わった綾子さんに加える暴力。さぞかし興奮しただろうに。」
山田アキラはその猫を見下ろし、無表情な顔のまま、口を歪ませた。笑ったようにも見えたが、憎しみの表情にも見えた。
最初のコメントを投稿しよう!