マナミの危機

6/6
前へ
/46ページ
次へ
「こんなところに隠していたのか」 アイン警部が駆け寄り、転がっていたリボルバー式の銃を取り上げてから、シュレディンガーに撃たれて、横たわる山田アキラの手にカチャリと手錠を掛けた。 「いてぇ…いてぇよ…いてぇ…ちくしょう…」 「さぁ立て!」 撃たれたと言っても、シュレディンガーの銃の弾は、人用のそれよりも随分と小さいために、頭か心臓でも打ち抜かないと致命傷にはなりずらい。実際、山田アキラの腕からは血は出ているものの、シャツに滲む程度だ。 「アキラくん。」 シュレディンガーが声を掛ける。 「…」 「君が川澄夫妻に選ばれた訳が分かったよ。」 「…」 「君のその、下劣な幼さだよ。このような小さなレディにまで憎しみの的にした、そういう君の身勝手さが…あの夫婦を燃え上がらせたのだ。下劣な人間と交わった綾子さんに加える暴力。さぞかし興奮しただろうに。」 山田アキラはその猫を見下ろし、無表情な顔のまま、口を歪ませた。笑ったようにも見えたが、憎しみの表情にも見えた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加