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そんなある日誘拐された…今日な。
『どうだ?俺の自伝。ありふれた不良のハナシ』
つってもわかるわけねぇわな。
―まぁ大筋はわかったにゃよ―
『ぅお!?』
喋った!?今こいつ喋った!?
―僕の発声器官じゃニャァが限界なのにゃ。なので念話を使ってるのにゃあ―
なるほど口が動いてないな。つか語尾に、にゃあ、ってついてるのが可愛いじゃねえか…
―聞いた感じずいぶん複雑な世界みたいだにゃ。でもなんで生い立ちなんか話したにゃ?―
『いや、な。俺、こんなファンタジーな世界ってもっと単純なんだと思ってたんだ』
ある日異世界へ来た主人公。実はすげえ力が眠ってて、超頑張って敵を倒して世界を平和に導く。こんな感じ。
―ふぁんたじ?よくわかんにゃいけどにゃ、確かなのは沢山の命がある世界で簡単、単純なことは少ないにゃあ―
猫又がまともなことを言う。俺は頷いて答えた。
『本当だよな。俺さぁ、他人事なのに魔王になるつもりになっちまってさ』
厄介なことからは離れて生きてきた。ましてこの計画に乗れば沢山の命に影響することになる。あまりにも重い選択を俺はしようとしている。
なぜ断らないのか?わからない。だけど…なぁ?
『俺、無力感って嫌いなんだよね。だから何にも関わりたくなかったけど』
このまま魔界をほったらかすって選択もある。つまり、逃げるって事だ。
でも何か嫌だ。
問題があって、それを解決できる可能性が俺にあるってんならやってみる。俺が要るってんならやってやる。
―まぁ僕らとしてはありがたいけどにゃ、何で元の世界でそう思わなかったのにゃ?―
状況は余り変わらないだろって?そうなんだよな、何でだろな。あぁでも多分な、
『異世界だからだな』
地球の問題には虚しさが浮かぶだけだった。無力感と諦めが全てを覆って自分がいかにちっぽけなのかを思い知るだけで。
多分この世界の事を全く知らないから、出来そうな気がするんだろう。でもそれでもいいじゃん。
だって初めて誰かに必要とされたんだ。
とんでもなく杜撰な計画だけど、そんなのはいくらでも修正できるってもんだ。大体言うなりに動くなんて性に合わないしな。
『オッケー、無問題ってやつだな』
俺は、魔王になることを決めた。
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