14031人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ルシフェル様?」
気絶したハルをとりあえず床に横たえて実体化したシャドウが声を発した。
「何?」
「ワタクシどもはハルに【イシ】を入れましたガ…」
「入れたねぇ」
気のせいか微かな震えが見えるシャドウと、対照的に紅茶を楽しんでいるルシフェル。
「ワタクシどもが今までしてきた後付けの対象は、魔を多少なりと持っている生き物でしたョネ?」
「そうだねぇ」
「あの…ハルには魔は全く感じられなかったのですが…それにいきなり【イシ】なんか入れちゃって大丈夫なんでしょうカ…」
不安げにハルを見つめているシャドウ。
「あ~…んー大丈夫なんじゃない?生きてるみたいだしさぁ」
あくまで気楽なルシフェル。ちなみに彼は悪魔族。(作者註=当作では堕天使は数名しかいないため不本意ながら悪魔族と一くくりにされています)
「今まで気絶した事ナンテ無いんですガ…」
「だーいじょうぶだってば。そんな顔してないで紅茶でも飲んだら?」
なおも食い下がるシャドウに苦笑いしたルシフェルは、手招きして紅茶を淹れた。
「入れた瞬間消し飛ぶ可能性もあったわけだしね。消えてないから大丈夫だよきっと~」
暢気なルシフェルにつられてシャドウも安心したようだった。
さりげない鬼畜発言は当然のようにスルーされた。
二人の背後で気絶しているハルが薄く発光していることにも気付かずお茶会を堪能していると、扉が勢いよく開いた。
「あれ?どしたの、ハーミット」
息を切らせて入ってきた老人にルシフェルが尋ねた。
「ぶ、無礼お詫び申し上げます、ただならぬ魔力を感じたもので侵入者かと…」
ゼイゼイ言いながらのハーミットの報告に二人は首をかしげた。侵入者があれば気がつくはず。
ルシフェルは辺りの魔力を探ってみた。
「…なんかこの部屋魔力濃くない?」
さらに細かく探った。発信源は…背後。振り返ってみた。
「ルシフェル様…?ワタクシの目にはハルが光っていルようニ見えマスが…」
「奇遇だね。私にもそう見えているよ」
二人は乾いた笑いをこぼした。
「し、侵入者ではありませんでしたな!!では小生はこれにて!!」
ハーミットは素早く去っていった。
「ハーミット…後でお仕置きだね。さて、どうしようか…」
あまりの魔力の密度にものが歪んで見え始めた。
ルシフェルは溜め息をついた。
「…めんどくさ」
最初のコメントを投稿しよう!