第一章 ~ありふれまくったファンタジー~

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「まだお戻りデハない…ですヨネ」   シャドウは庭園に続く扉の前でうろうろしていた。既に30分は過ぎている…考え事に時間を割かないシャドウとしては若干心配になりつつあった。   「もしやハル様に何かあったのでハ…でも、ルシフェル様みたいによくよくお考えになってるのカモ知れませんシ…もしも邪魔してしまったら…怖いデス」   そこまで言うとぶるりと身体を震わせた。何かトラウマがあるらしい。そしてどうやら自分がよく考えないという発想はないようだ。   困り果てた顔のままうろうろうろうろしている。その姿を見たのが廊下を掃除していた魔族だけだったのは彼にとって幸いだったろう。   それからしばらして、ゆっくりと扉がノックされた。飛びつくように扉を引くとハルが疲れた顔をして出てきた。猫又も一緒だ。ただし元気だが。   「アレ、何か疲れてらっしゃいマス?」   『いや…』   否定されたシャドウは気のせいかしらと首を傾げながら扉を閉めた。   『…なぁ?その扉は内側からしか開かないのか?鍵が付いてるとか』   元いた部屋へと歩いていく途中ハルが尋ねた。   「いえそんなことハないですヨ。ただ頑丈に作ってありますからチョット重いんですヨネ」   ハルが外から扉を開けるのに四苦八苦していたとは露知らず、シャドウは返事をした。   『…どんだけ怪力なんだよ』   「え?」   ぼそりとつぶやかれた言葉が聞き取れず振り返って聞き返すシャドウ。   『何でもねぇよ。あ、そうそう。俺魔王なるわ』   「ア、そうですカ…ってよヨヨ宜しいんデス!?…あの、ワタクシが言ったことニお気を使われたトカ…そんなことハ…」   断られたくない、気を変えられたくない。ずるい気持ちが働いて語尾が消えてゆく。シャドウは自分を卑怯だと思った。ハルの顔を真っ直ぐ見られなくなった、その瞬間聞こえた言葉。   『あぁ?ねぇよ。俺がお前の言うことなんか気にするかよ』   ハルの痛烈な一言。シャドウは思わず顔を見てしまった。ハルは少しだけ笑っていた。   『どうせさっきも扉の前で悩んでたんだろ。俺が他人に気を使うわけねぇだろ、それもお前に』   「…何かそれ悲しいでス、ハル様」   それでもシャドウは笑った。気を使わないと言いながらもどこかに優しさを感じた。   『これ以上その話題引っ張ったらボコるからな』   「ボコるっテ…あ、は、ハイ…」   しかし照れ隠しなのか何なのか続けられた言葉は、ボコるのイメージがキャッチできたシャドウには恐ろしかった。
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