掌中の記憶

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「なあ、婚約者ってどんな人?」 「ほへっ?」 なんだ、その間抜けな返事は。 「聞きたい?」 「いや、別に」 「なにそれ」 「言いたい?」 「別に」 ふいに無言の信号待ち。 今、僕らの隙間を辛うじてつないでいるのは街の喧騒だけだ。 駅までの道はまだ遠い。 だから、歩きだすついでみたいに言葉を紡ぐ。 「やっぱり一応…聞かせろよ」 赤から青へ。 強制的なリスタートのサイン。 僕らは未来へ進まねばならない。 いやおうなしに。
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