零れ落ちゆくもの

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「最近…っていうか今更だけどさ、俺、本当に教師になりたかったのかなって考えるんだ」 無言で続きを促される。 「昔から、夢がないのは格好悪いって思い込んでた。いつも何か目先の小さな目標に向かって進んでなきゃ不安だった」 「マグロみたいね。ずっと泳ぎ続けてないと、止まったら死ぬんだって」 あっけらかんとした美央の言葉に、少し気分が軽くなった。 言葉がぼろぼろと零れだす。 「そこまで切羽詰まった状況じゃないけどな。でも、俺はいつになったら止まれるのかなぁ…っていつも思うよ。学生の頃って全てに期限があるだろ?一学期とか何年生とか、受験して高校行って、また勉強して大学行って、そしたら今度は社会人になる為にあれこれ努力して…いちいち深く考えなくても前に進んでる実感があった。でもそこを過ぎると途端に人生って曖昧になると思わないか?次が見えないんだ」 「確かに。ま、私の場合は嫁に行けとうるさく言われたけどね」 「俺、悩むのが嫌でとりあえず教師を目指したんだ。でも改めて考えると、その後どうしたいのか考えたことなかった。だから…」
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