てのひらの昨日 ゆびさきの明日

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あなたに似てるわ… 聞いてはいけないことを聞いてしまった気がした。 彼女の真意を測りかねつつも、脳裏に甦ってきたのは卒業の日の風景だった。 相変わらず最後の日も飲み会をしていた僕らゼミ仲間は、誰かの提案で互いの手帳やノートに寄せ書きをすることになった。 まるで卒業アルバムの巻末に落書きをしあう小学生のノリだったが、やけに楽しかったのを覚えている。 今思えば、大人になってしまう前の最後の悪あがきだったのかもしれない。 仲間のノートに自分が何を書いたのかは憶えていない。 でも今、美央が僕にあてて書いてくれた一言は、その整った字体ごと奇跡のように鮮明に思い出された。 『あなたと私の歩む道が、いつかまた、どこかで重なりますように。』 あのときは“お互いに教職に就くという夢を叶えましょう”というエールだと思っていた。 でももしも、それが大きなまちがいだったとしたら? いや、多分そうなんだろう。 だとしたら、僕はつくづく自分勝手な人間だ。 いまさら僕にできるのは、彼女の話を聞き届けること…もう、それだけしかない。
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