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「修平さ、卒業式の日、私の手帳になんて書いてくれたか憶えてる?」
そう尋ねてから、美央は切符を買いに行った。
僕は定期券を弄びながら、その白い小さな後ろ姿を見ていた。
改札を抜ける。
「…思いだしたよ、今。
“幸せになってください”
美央のこと、確かに友達としてだけど、大好きだったから…本気でそう書いた」
二人きりのプラットホームを特急電車が通過していった。
「あの晩悔しくて泣いたなー。あんたなしでどうやって幸せになれっつーの?ひとの気も知らないで勝手なこと言うなよ、ってね」
風に煽られて乱れた髪を押さえながら、美央が懐かしげに笑った。
「ごめん」
「違う違う、責めてるんじゃないの。ちゃんと告白できなかった私が悪いんだし。むしろいまさらこんは話しちゃって修平困らせて、謝らなくちゃいけないのは私のほうなんだから」
「いや、そんなこと…。なんにもできなくてごめん。ありがとう」
構内にアナウンスが流れた。
彼女の乗る電車がもうすぐやってくる。
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