9人が本棚に入れています
本棚に追加
「修平、最後にもう一回だけ、本気で言ってくれないかな」
彼女の欲しい言葉はひとつだけ。
後ろを振り返らずに、未来へ向かって進むためのホイッスル。
それを使えるのは僕しかいない。
「最後なんだからさ、ゆびきりぐらいしろよ」
僕が笑って差し出した小指に、彼女も笑顔で自分のそれを絡める。
さあ、始まりの合図だ。
「幸せになってください」
「修平も」
美央を乗せた列車が動き始める。
小さくなってゆくその姿を見届けてから、僕も向かいにやってきた逆方面行きの列車に乗り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!