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2年後の春、また僕らは会えるだろう。
相変わらず政志は仲間全員に連絡をとるだろうし、僕らはそれに喜んで乗っかって、性凝りもなくくだらない話で盛り上がるにちがいない。
その中にはきっと当たり前のように美央もいる。
けれどこの先、本当の意味で僕と彼女の道が重なることはないだろう。
僕と彼女の手が触れ合うことも、もう二度とない。
幸せになるという約束は、幸せになる為の努力を惜しまないということ。
幸せになることを諦めないということ。
つまり、生きていくということだ。
精一杯。
有限の未来を。
とんだ約束をしてしまったなぁ。
苦笑しながら見つめた指先に残る感触は、ひんやりとしつつもほのあたたかく、気付けば頬にあたる春の宵の風によく似ていた。
とうに空になった向かいのプラットホームの屋根ごしに、未完成な月が見える。
僕の為に、発車のベルが鳴った。
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