彼女の左手

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「そういえば修平、禁煙成功したの?今日、居酒屋でもカラオケでも全然吸ってなかったよね?」 「おぅ、ちょうど前回の同窓会の時にオマエらの前で宣言して以来だから、もうかれこれ丸2年だな」 「さすが、有言実行の各務修平だね。初志貫徹で高校教師になり、タバコまで辞めるとは」 「んー、まぁなんとなく癖になってただけで、もともと美味いとも思ってなかったしな。それに、有言実行で高校教師になったのは美央も一緒だろ」 「まぁね。偉いよね、私たち」 たわいもない会話が、学生時代と同じテンポで転がってゆくことが無性に嬉しい。 大学卒業以来、2年に1回開かれている同窓会が楽しみなのは、この感覚を味わうためだと言っても過言ではない。 もっとも、それはあくまで僕の主観であって、他の連中は仲間の近況や互いの仕事について、実のある話をしたいのかもしれないが。 現に、明日たまたま大事な用があって早めに退席せざるを得なかった僕達以外は、今頃静かなバーででも語らっているだろう。 正直、そういう雰囲気は苦手だ。 というか、学生時代の仲間と大人じみた話をするのは…なんだか寂しい。 そう感じる僕の方が変なのだろうか。
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