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そういえば──。
「さっきのあれ、覚えてる?」
「あれってどれよ?」
「景色。空とか海とか火山とか」
「ドラゴンとかエルフとかね」
「ようするにそういうこと」
「異世界だからそういうもんでしょう」
異世界。
彼女は簡単に口にするけど、僕としてはそうそう簡単に現実を失いたくはない。
「じゃあ僕たち、寝てる間に異世界だかファンタジー世界だかに飛ばされたってわけなの?」
「召還とかじゃない?よくマンガとかアニメにあるでしょ?」
そういえば、彼女、自分から引きこもりとか言っていた。てことは、そっち系の人か。
「そっちってどっちよ」
彼女が一にらみする。
「あたしなんかまだまだひよっこよ」
「まぁそれはおいといて、仮にココが日本じゃないとしようか」
僕も譲らない。
「アマゾンやアフリカって線もあるよね」
「へーあんあたの知ってるアマゾンやアフリカにはドラゴンいるんだ。飛ぶやつ」
「……」
あんまりきいたことはないけど。
「あ、わかった」
夢だ。これは夢で実際はあったかい布団でまだ夢の中でもうすぐ朝で幼なじみの──
ドガッ!
さっきの数倍の石が飛んできて僕の耳をかすめて岩肌に当たる。
「ちょっと避けないでよ。避けたら痛いか痛くないかわからないじゃない」
殺す気か!
「は、話せばわかる!」
「問答無用!」
と、さらに大きな石を振りかぶるキリコを何とかしてなだめた。
「気が動転してるのはよくわかった。とにかくちょっと落ち着いて!」
「別に動転なんてしてないわよ。あたしはいたって普通。脈拍も正常よ」
「いや、普通動転するもんじゃない?」
「あたしがしてるのは興奮」
彼女の目が妖しく輝きだした。
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