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「異世界?ファンタジー?結構じゃない。寝て起きてネットして寝るだけの毎日よりよっぽど刺激的だわ」
いや、それあなただけだから。
僕は普通に生活してるから。
学校とか、友達とか──はあんましいないなぁ。
僕は自分の特殊な生活に思いをはせて押し黙った。
「ふむふむ、カズユキくんもいろいろありそうね」
ニヤニヤして彼女が鉄格子に近づいてくる。
「なんか溜まってることあったらおねぇさんにみんなぶちまけちゃいな」
「って何でおねぇさんなんだよ。同じクラスじゃないか」
彼女は自信満々にかぶりを振った。
「あたしが何年引きこもってると思うのよ。16才。多分一年先輩よ」
「あ、そうなんですか」
「いや、敬語はいいから」
キリコは渋面を作った。
「体育会系はキライなの」
それは失礼。
「で?」
「でって?」
「友達いないんでしょう?」
イキナリ踏み込んできた。初対面なのに。
「そりゃいないけどさ」
「なんで?見た感じ普通なのに」
僕は肩をすくめた。人にはいろいろ事情があるんだよ。僕の事情は、ちょっと特殊な能力に秀でてるということで――。
「え?ナニナニ?超能力とか?」
さっきにも増して目が輝いた。
「いや、そういうんじゃなくて」
僕は無意識に腰に手をやった。ほとんど寝るとき意外に身に着けているアレがないとやっぱり心細い。
「剣がさぁ」
「剣?剣道とかの剣?」
「剣ていうか、刀」
「木刀?」
「真剣」
僕は努めて冷静に説明した。両親は小さいころに他界したこと、祖父のやっている道場に身をおき、修行という名の生活を送っていること、物心ついたときからの日課でもあり、つらくはないし、こういうもんだと思って学校以外の時間は剣に触れている毎日だということ。
「それよ!それ!一子相伝とかそういうの!うわー!燃える!」
「まぁ剣道じゃないからあんまり学校とかでは役に立たないけど」
「なにいってんの。立つわよ、立ちまくりよ。ファンタジー世界は別名『剣と魔法の世界』よ!ただの普通の人がこんな異世界に来るわけないと思ってたわ!」
彼女の興奮も絶好調だ。
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