108人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに怪我はないわ。だけど、出来たらもう少し派手に終わらせてくれない? ちょっと味気無いから」
「……さっきまで子猫みたいに震えていたくせに、よく言いますよ」
主に対する不満は、従者なら誰しも持つものだろう。それを消化する方法は人それぞれであるが、シェイドのやり方は異質である。
彼は、不満があったら『本人の目の前で』悪口を言うのだ。無論、簡単に聞き取れる程度の声量で。
狙いはシャルロットを怯ませる事にあり、その目的は見事に達成された。
「そ、それは、戸を開けていきなり山賊に出くわしたら、誰だってああなるわよ!」
「そうですか? 私はそうなれる自信がありません」
シャルロットをからかう事をやめ、シェイドは床に横たわる山賊たちを一人一人外へと放り出した。
まだ不満そうな彼女には目もくれずに、彼は三人目の山賊を背負う。
「ああ、お嬢様のせいで、予定より35分も日程を遅らせないといけなくなりました。今日の宿泊場所に辿り着けるかどうか。野宿になっても文句は言わないで下さいね」
小屋に並行する花壇に山賊を並べたシェイドは、両手をパンパンと叩いて中に戻ってくる。
白い手袋を摘み上げ、両手に装着した彼は、荷物の入ったバッグを片手で持ち上げた。
「ほら、もたもたしないで下さい。下手な時間になると、魔物に出くわしますから」
最初のコメントを投稿しよう!