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  「それで、旅人が殺されるのを見た時って、どうしたの?」  あまり芯の通っていない声で、シャルロットは問う。この会話を始める前よりも少し遅いペースで、二人はゆっくりと歩いていた。  相変わらず口許を押さえて笑っているシェイドは、怯えた様子の彼女を見て、さらに笑みを深めている。 「別に、どうもしませんよ。見ていただけです。私は、忠誠を誓うに値する者のため以外には、決して刃を振るいません」 「見殺しにしたの?」  彼の答えに、シャルロットは凛とした口調で問い掛けた。先ほどまでの怯えは微塵も感じられない、犯罪者を弾劾するような口調で、だ。  無形の威圧感を迸らせる彼女を見ても、シェイドは飄々とした態度を崩さない。毅然とした口調で彼は返す。 「私が見た時、既に死んでいたのですよ? それを見殺しというのなら」 「その魔物はどうしたの?」 「知りません。私はすぐにその場から離れましたし。ただ、肉食の魔物だったので、『食事』はしたと思いますよ」  人間が魔物に食べられる様を『食事』と表現できてしまうシェイドに対し、シャルロットは少なからず畏怖の情を抱いた。  ただ、それも一瞬の事。彼女は初めてシェイドの方を振り返り、非難するような目付きで睨み付けた。 「どうして、その魔物を殺さなかったのよ! 人間が殺されてるのを見たんでしょ? だったら仇討ちくらい――」  そこまで口にした彼女は、シェイドの表情を見て硬直した。  彼の表情に宿るのは、シャルロットに対する冷たい軽蔑。 「やれやれ、世間知らずはこれだから困る。自分では何も出来ないくせに。そんな貴方に、私が説明してあげましょう。有り難く思いなさい」  
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