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「それで、山賊の規模というのは?」
「12、3人らしいけど……正確な情報はないわ」
完全にお人形さんに成り果て、シェイドの背に乗せられているシャルロットに目をやりながら、アベルは彼の質問に受け答えた。
相変わらず叱られたショックから抜け出せないらしく、シャルロットは放心状態である。
二人が歩く山道はそれなりに厳しかったが、表情にその苦しさは微塵も現れていない。
「その娘、どうしたの? 恋人にフられたの?」
「そんなもんですね。まあ、二時間もすれば元に戻りますから」
魂の抜け掛かったシャルロット人形が、二時間程度で元に戻るとは考え難い。
アベルもそう思ったようだが、深く掘り下げたりはしなかった。
いくら詳しく聞いても、これ以上信頼の置ける情報が出てくるとは思えないからだ。
シェイドという男の態度は飄々としているため、信用が置けるかどうかいまいち分からないのだろう。
「ちなみに、戦力は?」
「どうだろう……レトの自警団は壊滅したらしいけど、その人たちは戦闘経験がなかったらしいし。まあ、あんたの実力によるわね。私は強いけど、一人で全部は厳しいし」
ふむ、と納得したような声を出し、シェイドは辺りを見渡す。木の実が転がる道の周りには、大樹が所狭しと立ち並んでいる。
沈みかけた陽の赤い光は、その隙間から二人を照らした。
「アベルさん、お気を付け下さい。山賊たちが隠れています」
シェイドが『少し大きめの声で』注意を促したのと同時に、ざわつく樹々の隙間から無数の影が現れた。
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