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「しっかりと私の娘を守るように。よいな、シェイド」
「仰せのままに、ザルガン様」
屋敷の外で、互いに感情の籠らないやり取りを交わした二人は、門からシャルロットが出てくるのを待っていた。
この二人は、あまり仲がよろしくない。ザルガンは、娘を守るという最重要事項を事も無げにこなすシェイドに対し、ほんの少しの信頼と、それと同等の不満を抱いている。
ザルガンにも従者はいるのだが、シェイドに比べると明らかに見劣りしており、何度も自分の従者になれ、と言っているのだが、彼は全く取り合わない。
シェイドはザルガンが嫌いだと口にはしないものの、雰囲気で感情が丸分かりである。
「シェイド、出発よ!」
玄関から声を張り上げたシャルロット。その視界にザルガンを捉えた瞬間、彼女の表情はあからさまに歪んだ。
そんな事は日常茶飯事らしく、ザルガンは何も気にした様子はなかったが。
彼女は上下とも動きやすそうな作業着を纏っている。地味で簡素なその服には、金髪も碧眼も全く似合っていない。
「その格好で公爵に会うつもりか?」
「ご安心を。お召し物は私が持っております」
どれだけ綻びを探そうと、決してそれを見つける事が出来ない。それが、シェイドという男。
ザルガンは、ますますこの男が嫌いになった。
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