お使い

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  「お嬢様が、カレイルから外に出られたのは初めてですね」  燦々と降り注ぐ日光を全身に浴びながら、長身細身で眉目秀麗な男は言った。  彼は相変わらず黒いスーツを纏っており、両手には白い手袋をしているため、顔以外は全く露出していない。 「そうね。お使いっていっても、こんな所を通るのは初めて」  石畳が敷き詰められたカレイルの街中とは違い、二人が歩く道は川辺の不安定な砂利道。  全ての荷物を従者であるシェイドに持たせているとはいえ、慣れない道にシャルロットは苦戦しているようだ。  少し濁った川のほとりを歩く二人は、その視界の先に小さな小屋を捉えた。 「あれは旅人の小屋です。かつての英雄、ファルシオーヌとレクティスが立ち寄った小屋として有名ですね。そういう小屋が、この世界には山程あります」 「そう。じゃあ、私達も休みましょ」  シェイドの説明が終わらないうちに、シャルロットはその小屋に向かって駆け出した。疲れたから休ませろ、という意思を具現化したものだろう。  彼は面倒そうな表情を一瞬浮かべたが、すぐに笑顔に塗り替えた。  何かを企んでいるかのような、不気味なものだったが。  
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