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クゥと毎日過ごせることを幸せに感じていたある日のこと─────
「紗織、ちょっといいか?」
「なぁに、お父さん…」
いつも陽気な父が珍しく神妙な面持ちで話しかけてきたので、戸惑いながら答える。
「そこ、座って」
父が指さすダイニングの椅子に腰を掛ける。
「…実は───子猫達の貰い手が決まってな…」
「それは知ってるけど…──でもクゥは家で飼うってお父さん言ってくれてたよね?」
「…ごめんな。でもどうしてもクゥを飼いたいって人が現れて…子供のできないご夫婦なんだ。だからクゥのことは大切に育ててくれると思う。紗織の気持ちはお父さん充分にわかってたつもりだから、本当はこんな話ししたくなかったんだけど…」
「お父さん、私がクゥを大事に育てることに賛成してくれてたじゃん!」
「ごめん」
「嫌だよ…また離ればなれになっちゃうの?シュウの時と同じように…」
「サオ…」
「嫌だよぉ」
お父さんの言葉を遮るように泣き出した。
涙が溢れて止まらなくて──
思わずクゥの元へかけ出した。
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