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アイクにとって、今まで打ち込める事は無かった。ハンター業も他の人と違う事がしたかっただけで特にやりたかったわけで無かった。
だが、目の前に初めて熱くなったモノがある。理由は分からないが『龍』の姿のハンターと戦って初めて『生きてる』と感じた。
「君は…これからの人生を捨てるのか?」
「え?」
『龍』の姿のハンターは今度はアイクをしっかりと見つめて言った。
「君には…これからがある。君は何も作って無いから…何もまだ失って無い。これからの人生で君は色々なモノを作ったり、手に入れて失って…それでも幸せを感じるはずだ。」『龍』の姿のハンターは一息ついてから言葉を繋いだ。
「それでも君は幸せになれなくて、苦しみしか無いのなら私のもとに来れば良い。ただし、私のもとに来てもきっと痛みと苦しみの日々となるだろうが…」
とても哀しげな声だった。
『龍』の姿のハンターも樹海の森に消えて行った。
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ある昼下がりの『街』のギルドの集会所にアイクはいた。
アイクは考えていた。何故あの時、血が身体が魂が熱くなったのかを。
そこに一人の少年がやって来た。
「あの…スイマセン。アイクさんですよね?」
レザーメイルで身を包んだその姿はどうやら新人ハンターの様だった。
「僕リュウっていうんですが、もし…もし良かったら一緒にクエスト行っていただけませんか?」
『(はは…チームで狩るのがこんなに楽しいとは………)
(…そうだな………仲間と狩るというのも悪くは無い。)』
(チームで狩ったから熱くなったのか?)
アイクの瞳に光が宿る。
「あぁ…よろしく。」その声を聞いて他のハンター達は驚いた。辺りがざわめき始める。
アイクは外を見た。今まで聞こえなかった音が聞こえた。心が温い。
色が無かった世界が鮮やかに色付いた。
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