『白闇の竜姫』

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シュレイド王国の外れに巨大なモンスターから国を守るための施設がある。我々はそれを『砦』と呼んでいる。 今までも様々なモンスターがこの地に来て猛威を振るったが、『モンスターハンター』達によって倒されたり撃退されていた。 だが、今回は違っていた。 侵略者の名は『老山龍(ラオシャンロン)』その巨大さは1つの山を思わせるほどで大砲やバリスタでも怯みはするがまるで効いていないかのように悠々と進み、正に『砦』は破壊されようとしていた。 多くの『モンスターハンター』達は己の力では敵わぬと悟り逃出した中、2人のハンターが『老山龍』の前に立ちふさがった。   一人は17歳くらいの少女で背丈が高いが細身でフルフルと呼ばれる飛竜の皮から作られた鎧を纏い、妖しく輝く双剣を構えている。白銀の髪を左で結い、真紅の眼は目の前にいる『老山龍』しか映していない。その純白の姿は一見神々しく、とても雄々しい。 もう一人は19歳くらいの青年でがっかりした体付きで、ディアブロスという飛竜の甲殻から作られた漆黒の鎧で全身を覆っているため顔立ちは分からない。やけに大きなボウガンを構えていて、その銃口もまた『老山龍』に向けられている。少女の神々しい雰囲気とは対照的に何か不吉なもの…例えば悪魔を連想してしまう。     「ジャック…アレを倒せば国は守られますね…」 白い少女は黒い青年・ジャックに笑顔で言った。その笑顔はとても自信に満ちている。ジャックはそれを聞いて鼻で笑った。そして呆れているかのように首をかしげた。 「おいおいセツナ…お前はなんでそうかなぁ?ここまで来たら普通自分の知名度が国中…いや、世界中に轟く…とかって自分の利益を考えないのか?本当にお前は『正義の味方』『英雄』様だな?」 「何を言ってるのですか?私は『正義の味方』とか『英雄』なんかじゃありませんよ。自分の国の平和を祈ったら駄目ですか?」 セツナは少しむつけた様にジャックを睨み付けた。 「おぉ…恐い恐い……あ、それよりラオだろ?さっさとやっつけちまおうぜ?………世界平和のために………ぶふ」 「………………絶対馬鹿にしてるだろ?」 セツナは肩を落としつつ双剣を構え直し、『老山龍』に向かって駆け出した。そしてジャックはそれを見てボウガンの引き金を引いた。
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