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「スッ、スラスター……!」
アキラは急いでフットペダルを踏み込み、メインスラスターを開く。
視点が一転し、青い海から雲がかった空へと移る。
脚部の姿勢制御用バーニアも噴かし、海面スレスレで仰向けに機体をホバリングさせた。
「やった……ッ!」
直ぐさま体制を立て直し、上空に向かって自動射撃を行う。
それに射ぬかれたクォンタムが数機海面に激突し、高い水柱と黒煙が上がった。
爆煙を切り裂くように現れたウートガルトを見て、クォンタムパイロット達に緊張が走る。
「新型の一機だ……強いぞ、こいつ!」
一機のクォンタムがプラズマ粒子により構築されたビームサーベルを引き抜き、新型に接近を試みた。
「ようし……!」
勢いよく突貫したパイロットだったが、いきなりモニターを覆った黒い影に機体を止まらせた。
そして、それがフレィ・クエンサーの銃口だと気付いた時、コクピットは蜂の巣にされた後だった。
いや、気付いていなかったかもしれない。
「あちゃー……マズイか? これって」
アトラス・ノア中佐は、手で自らの黒髪をかき上げると、艦長に問う。
「マズイも何も、既に半数のクォンタムが墜とされています。これ以上は……」
艦長が言い終わる前にアトラスはかぶりを振り、言う。
「わーった! 俺も出よう。宝箱はロイに任せる」
艦橋を出ていくアトラスの背中を見て、艦長は精神的疲れからくるため息を堪えるのに苦労するのだった。
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