PROLOGUE

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一方この艦内の食堂では、クラス単位で何十人もの学生達がいた。 「センセ、暇なんすけど」 からかうように言ったその少年は、手に持ったペンをクルクルと回す。 左手の甲にはルナリアン、つまり月生まれを示す槍状の『ナノマシン』のマーク。 隣にいた友人二人がクスクスと笑い、その少年も悪戯っぽくにやけた。 だが、引率の教員が口を開く前に別の声が響く。 「遊ばないの、アキラ! 目的が違うでしょ?」 茶色いボブカットの少女が彼、アキラの頭を叩く。 彼女もまた、ナノマシンのマークが付いていた。 彼女を見て、アキラは口を尖らせる。 「分かってるよカナン。でもさ、軍艦なんて中々乗れないだろ? 気分も上がるって、なぁ?」 隣にいる友人に振り向くと、彼らも頷いた。 アキラ、カナン含む数十名の学生達は、今日地球で行われる八度目の『月地球間不戦平等条約』の審議を社会見学しに来たのだ。 そして、彼らが乗り込んでいる艦こそが、カラレス艦長率いる『アースガルズ』。 この先に待つことを知らぬ少年達は、ただ笑うだけ。 今、入港を知らせるサイレンが鳴る。
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