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「…誰か居るの?」
振り向けば、窓際に西日を背に1人の少年の影が見受けられる。
「ああ、居るさ。君が来るずっと前から。君は神を畏れるかい?」
目を凝らして見ると、少年はひどく美しく神秘的な瑠璃の瞳でこちらを見ていた。
「僕に…聞いて居るのかい」
「君と僕以外にこの部屋に誰が居る?」
少年は可笑しそうにクスクスと笑いながら、僕に手招きする。
「何故、そんな質問を?」
「この図書室には幽霊が出るらしいからね。僕みたいに神に背いた奴しか近付かないんだ」
近付くと、彼は僕の栗色の髪を優しく梳いて、まるで愛しい者にそうする様に僕の身体を抱き締めた。
「き…君は、どうして此処に?」
突然の抱擁に驚いて、声が微かに上ずった。
「季節外れの転校生が、今日図書室に行くように、生徒達が促したらしい。君の事だね?ルチウス」
「確かに僕はルチウスだけれど…君は誰だい?うちのクラスには居なかった」
僕はやわらかく彼を押し退けながら、乱れた制服を整えた。
何故だか、触れられた身体がほんのり微熱を帯びている。
「僕は図書室の幽霊さ」
赤らむ僕を可笑しそうに指さして、彼は手にした本に視線を落とす。
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