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「行ってきたさ」
「それで?」
「知らない少年が1人居た。生徒なのは確かだけれど、自分を゛図書室の幽霊゛だなんて言ってた」
「へえ?この学園にあの部屋に入る奴なんて居たのか。変り者だね」
「本当に変わっているよ。どうかしている。いきなり抱き締めてキ……!!」
図書室の情景を思い出して、僕は手にしたスプーンを取りこぼしてしまった。
カシャンッと、スープ皿にぶつかって床に落ちて行く。
「どうしたんだい?ルチウス、顔が赤いよ。熱でもあるのかい」
「いや、何でも無いんだ。何でも……ねぇ?抱き締めて口付けるのは普通の事かい?…その、この学園では?」
「抱き締めて?まさか!普通はしないさ。うちは聖書に忠実なカトリック系の伝統ある学校なんだぜ。それに、男子校だ」
パンを頬張る眼鏡の彼が驚いたようにむせながら、胸をドンドンと叩いて、喉に詰まらせたらしいパンをミルクで飲み下す。
「まさか、図書室でされたのかい?」
僕は返答に困って、手元のパンを細かくちぎる。
「ダメだよ、いけないよ。キミ、もう図書室に近付かない方がいい。神様が許さない」
「…でも、本を借りて来たんだ。返しに行かなくちゃ」
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