晩夏残像

2/2
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
弱気な太陽 陰鬱な樹木の下で 僕を呼ぶような 見知らぬ聲が  聞こえた気がして踏み込んだ ザワザワと命を削る蝉時雨 肌に纏りつく青臭い湿気と生温い風 草を掻き分けて突き進む やがて時が止まって 視界揺らいで  呼吸が止まるその瞬間 もう蝉時雨も遠退いて 時空間に呑み込まれて行くから 見知らぬ聲だけ近付いて ウワンウワンと耳鳴りの様に おいで こちらにおいでと 薄汚れた ありきたりの日常棄てた そうして手に入れた ものは 屍のような 僕の脱け殻image=187693112.jpg
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!