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「ねぇ、イシュア! バラの奥様、とても喜んでいたわ!」
「大したことはしていませんよ。お嬢様があの奥様のことを知らせてくれなければ、私はあの奥様の機嫌を損ねていたところです。本来ならば、私が自分で気づかなければならないのに」
「いいのよ! だって、あの奥様はプリシラの大切な友人ですもの。なんだってしてあげたいし、わかりたいわ」
大男が、小さな少女を大きな包容力を思わせる微笑を携えて見つめる。
身の丈の差が大分あるにもかかわらず、少女に威圧感を感じさせない振る舞いだ。
「――なぁに? プリシラの顔になにかついてる?」
少女プリシラが不安げに訪ねる。
「いえ、すみません。お嬢様がお優しく、健やかに育っていらして……少し感慨に耽ってしまいました」
大男イシュアがプリシラに優しいバスの声で言った。
プリシラはそれを聞くと、どこか自慢げになった。
「嬉しい?」
「はい、もちろん」
純粋無垢のような小さな子どものように。
「好き?」
「ええ」
「やったぁ! プリシラ、イシュアのお嫁さんになれるかしら?!」
プリシラは、イシュアに大きな情を惜しみも無く注いでいた。
あまりにも純粋なまなざしで見つめてくるものだから、イシュアは少し困ってしまった。
「それは……恐れ多いことです」
なぜなら、彼はこのブレイク邸では使用人。
ご令嬢のプリシラと結ばれることなど――むしろ深い仲であると他に思われることなど、恐れ多いことであった。
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